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魔法の王国コインランド 第三周 その1 魔人タイフー



「ハァハァハァ、タスカルく~ん、もうダメだ、この魔人タイフーなんとかしなきゃ」

 勇者の声で気がつくと、またまた洗い桶で洗濯をしている。しかもなんだか雨も降ってるし、強い風に体がもっていかれそう。洗濯してるんだか、洗い桶につかまって飛ばされないようにしてるんだか。なに、この修羅場。なんで外でこんなことになってるの~。

「これはもう、魔法の王国へまた行くしかない」

「ミ~(やっぱりか~)」

 勇者は、どうやら外から帰ってきたみたい。考えてみたら、この人いったい外で何してるんだろう。とにかく、お約束の魔法の王国頼み。はいはい、今回は魔人タイフーが暴れているわけね。了解。


「じゃあ出発~」

 夕闇の中、洗濯物をかき集めて車に積んで、またワタシをその上に放り投げ、雨風が吹き荒れる道へと走りだした。それにしても、無限ループのように、毎回毎回なにをさせられてるのか。さすがに謎を楽しむ域を超えてきた。ま、仕方ない。とりあえず濡れた体をこの洗濯物で乾かさないと。


「さあ、着いたぞ」

 洗濯物の中で、モゾモゾと体を動かし、なんとか乾いた頃、車が止まって勇者が降り、後ろのドアを開けた。

「あれ、タスカル君。洗濯物に潜って、顔だけ出して。それって、かわいいアピール?」

「ミ、ミ~(いいから、早よ持っていきなはれ)」

 雨の中また濡れるのも面倒なので、洗濯物に入って持って行かれることにした。勇者は、車を建物の前につけて、なるべく濡れるのを防いで停めていた。少しは考えたじゃない。

「じゃあ、車ちゃんと停めてくるから」

 勇者は、洗濯物を王国のホワイトテーブルに置いてから、車を戻しに行った。自販機門番のホットさんには、この雨風で挨拶もままならない。ただ、出発したときよりも、雨風は少し弱まった感じ。

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