魔法の王国コインランド 第一周 その1 はじまりは突然に(1)
- 麻呂明弘
- 2021年3月9日
- 読了時間: 2分

ゴゴゴゴガガガガゴンガンゴンガン…
「あれ、寝てた?」
深夜のアパート。轟音に起こされ、マリは突っ伏していたテーブルから顔を上げた。
「ン、あれは~ヤバイやつ」
慌てて口元のぬるぬるを軽く手首で拭うと、立ち上がって洗面所に向かう。
「ごめん、ごめん、片寄ってたか~」
洗濯機に声をかけながら、マリは急いでフタを開けた。
「アレ?」
片寄っているどころか、洗濯物すらない。中はどこまでも深く広い漆黒の闇。
「エッ、エェ~」突然闇からの渦巻がマリの身体を包むと、悲鳴もろとも洗濯機に吸い込んでいった。
バタン。マリの消えた洗濯機は勢いよくフタを閉め、シュルシュルと気持ちイイ音を立てて洗濯を始めていた。
エッ、エェ~ッと。アレ?これは?なにか洗ってる?ただ、自分の手とは思えないほどちっちゃいし、毛深い。手をとめて顔を触ると、これもさわさわと毛の感触。まてまてまてぇい。慌てて洗い桶に浸かっている布をつまむと、桶の外に投げ出す。深呼吸して、落ち着いてきた水面を覗いたそこには。
「お~い、タスカル君」
男の声に振り返ると、ぼや~っとしているが、なんとなく腰をかけヒザに頬杖をついている感じの姿が見えた。
「洗濯物、汚れちゃうよ~」
そう言って、近づいて来た時、ようやく姿がはっきりしてきた。欧米風?それも映画のロード・オブ・ザ・リングとかで見た中世的な感じ?
「なんかボーっとしてるけど、大丈夫?タスカル君」
タスカル君?それがワタシの名前か。聞いたことがあるようなその名前と、さっき見た水面のあの顔は…アライグマ?ワタシがアライグマ?マジで?アライグマになって洗濯している?マジで?

























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