魔法の王国コインランド 第二周 その20 ホットさんにころがされ(1)
- 麻呂明弘
- 2021年6月23日
- 読了時間: 2分

「これはこれは、勇者様とタスカル君。王国はいかがですか」
「ホットさん、こんにちは。それはもう」
「ミ~~~(すっかり妖魔バイウは忘れてるみたいだけどね)」
「まぁまぁ。でも、スッキリして、一仕事終わったぜ、という感じとお見受けします。勇者の凱旋風な」
「え~、そうですかぁ。まぁそうなんですけど。今回もズバズバッとやっつけておきましたから」
「ミ~…(なにかが始まった…)」
「それはもう、祝杯ということですね。それなら最初はシャンパンがわりの炭酸。しかも疲れた体に11種ものビタミンが入った、ビタミン全開とか」
「おお。シャンパン代わりの炭酸。しかも体にも良い。さすがホットさん、わかってるねぇ」
勇者が苦手にしていた商人風のHOTさんは、睨んだ以上に商人風だったみたい。
「ミ~~(ワタシはなっちゃんリンゴかな)」
さすがにアライグマの味覚に炭酸はムリっぽい。
「えっと、コレは…」
「どうかされましたか?」
勇者は、お金を入れようとして手を止めている。
「この大きさで、ビタミン入りで、100円ですか」
「そうそう。身体にもお財布にもやさしいのが一番ですから」
「もう、ホットさん。最高だよ、あんた」
なんだか、勇者のこのシンプルさが、たまにいとおしくなってくる。やばいかも。
「いえいえ。タスカル君はなっちゃんのようです」
勇者は、2本買うと、1本をワタシに渡す。アライグマの身体は、チャンと後ろ足で立って、前足で受け取る感じが、我ながら器用で驚き。
「じゃあ乾杯のご発声を。勇者様」
ホットさんは、仕切りまでも抜かりない。でも、そこまでは…。
「ただいまご紹介に預かりました、勇者テンチョーと申します。今回は大役を仰せつかり…」
「ミ~(やるんか~い)」
「いて~」
さすがに聞くに堪えない。ジャンプ頭突きで止める。ちょっとこぼれたじゃない。
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