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魔法の王国コインランド 第一周 その3 謎の門番(2)


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「おや?おかしなことをおっしゃいますね。そちらのアライグマさんは」

「ミ、ミー?(言葉、わかるの?)」

「いいから、いいからタスカル君。ノド乾いてないよね。先を急ごう」

 勇者は、商売人ぽい門番?が苦手な感じで、軽く会釈をすると、その横を通りガラスに覆われた入口の扉をこわごわ開ける。

「そういえば、ここは謎の王国ですよね」

 勇者が思いついたように振り返り、門番?商売人?とにかく謎の自販機に小声で訊ねると、笑い声とともに自信に満ちた声がかえってきた。

「謎?ハッハッハ。ここは、アーサー国王の治められる『魔法の王国コインランド』と申します」 


「ちょっと待ってタスカル君」

 アライグマの身体はどうにもジッとしていられないらしく、ビビリの勇者の足元をスルリと抜け、先に王国に飛び込んだ。遅れて勇者も扉の中に足を踏み入れる。

 ボ~ッとした目で左右を見上げると、右にはうっそうとした緑に覆われた門のようなものが。

「う~ん、どっちからかなぁ。あっ、ちょっ」

「ミー(こっち)」

 勇者にはおかまいなしに、ニオイに反応したアライグマの身体は、迷わず左手に駆け出して行く。

 魔法も気になるが、コインランドという名前は聞き覚えがある。頭は現在、絶賛パニック中だが、なんとなく身体に遅れまいと気持ちも先へと急ぎだした。

「だから待って~。イロイロ重いんだからぁ~」

 重い体に鎧をつけた勇者の、悲しげな叫び声が王国に響いた。


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