魔法の王国コインランド 第二周 その11 ワゴンさんのグッジョブ(2)
- 麻呂明弘
- 2021年6月3日
- 読了時間: 2分

「ミ~…(いつの間に…)」
声の方を振り返ると、勇者の腰くらいの高さで、四角い格子状の大きな姿が目に入った。
「そこの旦那、ごめんなさいよ」
ワタシにそう声をかけながら、滑らかにジェーンの前に向かっていく。どうやら、4本脚に車輪がついているようだ。
「おっと」
勇者が横にとびのくと、そのまま開いているジェーンのお腹の下あたりにピッタリと身を寄せた。
「へい、お待ち」
「なんと。これはもしかして、この中へどうぞってこと?」
「へい、どうぞ、ごめんなすって、いただけますって」
「ミ~(なんだそりゃ)」
「はっはっは。ワゴンさん、なんだか張り切ってる。すいません、いきなりで。こちらは妖精のワゴンさんです。こうやって終わった洗濯物を乾燥機まで運んでくれるんです」
ジョンの説明でちょっと納得。でも、妖精ってゆ~より…妖怪…?
「もう、ワゴンさん。ちょっとぶつかったわよ」
「へい、そりゃあごめんなすってでございますって」
「ミ~(やっぱりうける~)」
勇者も笑ってるかと思ったけど、ジェーンとワゴンさんを交互に見ながら、なにやらブツブツ言っている。アライグマの耳で聴き耳を立てると…。
「ナスにゴメンって謝ってる?ナス君食べてゴメンとか…いただきますって言ってたし…」
「ミ~、ミ~(アホか~、しっかりしなはれ~)」
久しぶりに渾身のジャンプ頭突きをくらわしてあげた。
「いってぇ。もう、なんだよ~」
覚醒モードは完全に解けたわね。
「まぁまぁ勇者様。このワゴンさんに洗濯物をお入れください。高さがお腹の下あたりなので、ちょうど入れやすいと思います」
見かねたジョンは、勇者をうながしてくれた。勇者は、軽く口を尖らせてワタシを睨みながら、洗濯物を入れていく。子供か。でも、確かにちょうどいい高さなので、勇者もドサドサとテンポよく入れている。
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