魔法の王国コインランド 第二周 その2 ホワイト兄妹の洗濯(3)
- 麻呂明弘
- 2021年5月13日
- 読了時間: 2分

渾身のお腹の回転も、徐々に全身の力を抜くように、ゆっくりゆっくりと落ち着いていく。
そして、その回転が終わり一瞬の静寂が支配したその時…。
「ピーピーピー」
突然兄のジョンから警告音。
「だ、大丈夫ですか」
引けた腰のテンチョーが、恐る恐る声をかける。隣では、妹のジェーンがニヤニヤ。
「そ、そうですよね。終わった合図。もちろん知ってましたとも」
勇者は、目を泳がせながらワタシの頭をなでる。
「ミー(だからやめい)」
「お話は聞いてました。洗濯時間がどうして20分程度なのか、ちゃんと洗えてるのか、でしたね」
ジョンは律儀に返す。
「この前お話ししたかもしれませんが、要はすすぎが1回で済んでいるからです」
「そうなんですか。普通は1回では済まないんですね」
ワタシにまかせっきりらしい勇者は、この辺の話はまったくうとい感じ。
「ミ~(だからたまには手伝ったら)」
「洗濯するときは、洗剤をキレイに洗い流すため、通常すすぎを2回していると思います」
「だったら、1回だと洗剤が落ち切らずに残ってしまう。それが1回で済むのはどうしてか」
勇者は、意外に謎が大好物らしく、普段は腐った魚の目を輝かせて聞いている。
「ミ~…(それが例の魔法の水…)」
「おっと、タスカル君。さすがです」
「え~、ちょっと待ってよ。先に答えた~。ずるい~」
「そう、ずるい、ずるい~」
「もう、ジェーンは乗っからない」
「わかった。水ですね。そう言えば国王陛下もおっしゃっていた。アクアの魔法。水に秘密があるって」
勇者はようやく思い出し、ワタシを見下ろしながら鼻の穴を広げている。この単純さがすがすがしい。
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