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魔法の王国コインランド 第二周 その2 ホワイト兄妹の洗濯(3)



 渾身のお腹の回転も、徐々に全身の力を抜くように、ゆっくりゆっくりと落ち着いていく。

 そして、その回転が終わり一瞬の静寂が支配したその時…。

「ピーピーピー」

 突然兄のジョンから警告音。

「だ、大丈夫ですか」

 引けた腰のテンチョーが、恐る恐る声をかける。隣では、妹のジェーンがニヤニヤ。

「そ、そうですよね。終わった合図。もちろん知ってましたとも」

 勇者は、目を泳がせながらワタシの頭をなでる。

「ミー(だからやめい)」

「お話は聞いてました。洗濯時間がどうして20分程度なのか、ちゃんと洗えてるのか、でしたね」

 ジョンは律儀に返す。

「この前お話ししたかもしれませんが、要はすすぎが1回で済んでいるからです」

「そうなんですか。普通は1回では済まないんですね」

 ワタシにまかせっきりらしい勇者は、この辺の話はまったくうとい感じ。

「ミ~(だからたまには手伝ったら)」


「洗濯するときは、洗剤をキレイに洗い流すため、通常すすぎを2回していると思います」

「だったら、1回だと洗剤が落ち切らずに残ってしまう。それが1回で済むのはどうしてか」

 勇者は、意外に謎が大好物らしく、普段は腐った魚の目を輝かせて聞いている。

「ミ~…(それが例の魔法の水…)」

「おっと、タスカル君。さすがです」

「え~、ちょっと待ってよ。先に答えた~。ずるい~」

「そう、ずるい、ずるい~」

「もう、ジェーンは乗っからない」

「わかった。水ですね。そう言えば国王陛下もおっしゃっていた。アクアの魔法。水に秘密があるって」

 勇者はようやく思い出し、ワタシを見下ろしながら鼻の穴を広げている。この単純さがすがすがしい。

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