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魔法の王国コインランド 第一周 その16 グリーンコーナー(1)



「このグリーンコーナーには、4人が座れるベンチがあってゆっくり休めるんだ。また飲み物を置いたりできるカウンターもあって、同じく4人利用できる」

 ベンチは足を伸ばして利用できるし、カウンターは待ちながらちょっとした作業もできて便利そう。

「それに、雑誌もあるし、このパズルもオススメなんだよ」

「ザT」という名前の木のぬくもりを感じる木製パズルは、4つの木製ピースを組み合わせて「T」字や、そのほかの形をつくれる、有名なものだという。確かに以前どこかの宿で見た気もする。

「いや、これもう、はまるなあ」

 勇者は、説明を待たずにさっそくパズルを手にして喜んでいる。なけなしの勇者だけど、この辺は憎めない感じなのよね。


「こんばんは、カップさん」

 バケツ君が挨拶した先を見ると、入口にいた門番?よりもずっとスリムな黒い自販機が目に入った。

 パッと見た感じは、カップタイプみたいね。

「お~や、バケツ君…じゃないか~、お客様~?」

「ミ~。ミ~?(やっぱりお話になる。しかもスロー再生?)」

「勇者テンチョーさんと、タスカル君。よろしくね」

 バケツ君が紹介してくれるも、無言…。

「あの~」

「勇者様、もうちょっと待って」

「勇者様に………」

「ミ~(勇者の寿命がもたんで~)」

「タスカルく~ん」

「ははは。カップさんは、こうやってグリーンコーナーの時間の流れをゆっくりしてくれてるんだ」

「ま、まあ確かに。お相手するにはまだまだ修行が足りない感じですけど」

 パズルにてこずって投げ出した勇者も、もう一度パズルに戻ろうとしたが。


「なんちゃって~。まあ一杯いかがですか」

「ミー、ミ~(これはいまどき、なんちゃってって)」

 どうやら、カップさんも一筋縄ではいかない御仁のようね。

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