魔法の王国コインランド 第一周 その１５ グリーン魔法

「これは、賢者様、私なんぞは、なけなしの勇者でして。それで、ここは何か特別なんですか？」

　勇者は、はなから賢者には白旗モード。それにしても、なけなしの勇者って…。

「ここグリーンコーナーはこの王国にとって重要な魔法が宿っている、大事なパワースポットなんだ」

「ミ～、ミ～～（ここは、グリーンコーナーと呼ばれているんですか）」

それを聞いて見回すと、グリーンといわれるだけあって、目にやさしい植物の緑が辺り一面を覆っている。

「ミ～…（なんか癒される…）」

ふと言葉が口をついて出る。

「ホ～」

「それがグリーン魔法」

賢者の声を通訳して、バケツ君が笑いかける。

「緑色には人々を癒す力がある。そしてそれがこの魔法の王国コインランドの、大切な役割でもあるんだ」

「この緑に覆われたグリーンコーナーには、そんな大切な役割があったのですか」

　用事を済ませた帰り道に通っただけ。そんな軽い気持ちですっかり油断していたらしい勇者は、何か急に大事なことを言われた感じで、思わずワタシの頭をなでる。

「ミー、ミ～（えぇい、うっとうしい）」

「癒しの魔法ですか。それはありがたい」

「いきなりそう言われても、ちょっと難しいよね。では、少しここを案内してあげる」

　そう言うと、バケツ君はヨチヨチと地面を歩き始めた。

「遅っそ。やっぱりバケツは飛ばんよな」

「まぁまぁ、せかせかしないのも、時には大切なんだよ」

「すんません」

　バケツにたしなめられる勇者。根は素直ね。