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魔法の王国コインランド 第一周 その13 ホサナイ魔法(1)


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「国王様、失礼して」

 舞いの余韻に浸る国王陛下に遠慮しながらも、マシロさんがさっとガラス扉を開けると、周りのみんながフワッと温かい風に包まれた。

「いつもだけど、この洗濯物が乾いた匂いはたまらないね。それにこのフ~ンワリした感じ」

 マコさんの無邪気な言葉に、国王陛下は満足そうにしている。

「マシロさんは時間通りに来られ、こうやってすぐ取り出してくださいましたけれど、しばらく取り出してもらえない場合は、ちょっとコワいことが起こるんです」

「な、なんでしょうか」

 国王陛下のお言葉に、勇者は少し後ずさりしながら、こわごわ聞いた。


「実は、5分くらいたつと、自然にまたドラムが回り始めるんです。リンクルと表示されながら」

「そ、それは、何かの呪いですか」

「はは、驚かせてしまいましたね。実は万一オイルを含んだタオルなどの場合に自然発火しないよう、一定時間経つと洗濯物を撹拌する作法なんです」

「も、もう。親切作法なんじゃないですか。国王陛下もなかなかですね。それにしてもあんなにまとめて入れたのに、ほんとに絡まりもとれ、ほとんどシワもなくて」

「もちろん、入れる際に一枚ずつシワを伸ばしてから入れた方が、よりシワも伸びます。乾きも良いと思いますよ」

 確かに時間があるときは、まとめてドサドサ入れるよりも、一枚ずつ、できればシワも伸ばしてから入れた方がいいにきまってる。さらに、途中で扉を開け手でほぐし、また閉めれば再開されるので、もっと早くフンワリ仕上がるという裏技まで教えてくれた。


「国王様、いつもありがとうございます。干さないでいいから、花粉もつかない。ほんと助かります」

「王妃様も、じゃぁまた~」

 いつの間にか、マシロさんとマコさんは、洗濯物を手際よく取り出して畳むと、急いでさっき来た公園のような方向へ歩いて行った。両陛下もしばらくそれを見守っている。

 マシロさんが言っていたように、外に干さなければ、花粉はつかないし、それ以外のアレルギー物質の心配もない。干さなくて乾くなら、良いことづくめ。お母さんやおばあちゃんが知ったら喜ぶかも。

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