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魔法の王国コインランド 第一周 その12 乾燥の舞い(2)


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 仕方なく、洗濯物の動きを見上げていると…。

 ドラムの中の洗濯物は、下から上に持ち上げられて、最初はドサッと下に落ちる。舞いというより重苦しい導入部という感じ。それが徐々に、水分がなくなり軽くなっていくに従い、みるみるうちに洗濯物がフワリフワリと軽やかに舞いながら落ちるようになっていく。

大きい物に小さい物、それぞれが個性を発揮し舞いながら落ちていく。

 隣の王妃様がやさしく説明してくれた。

「これはドラムが回転すると同時に、上から強力な火力で温められた熱風がドラムの無数の穴を通して下に吹き付けているのです。熱風は洗濯物を乾かすと同時にほこりや付着している花粉なども吹き飛ばす。そしてほこりなどをまとった熱風は、ドラムの穴から下に抜け、下の強力なファン、まあ回転するお尻ですね、それで外に吹き出す仕組みなんです」


「なんか大変そうですね、国王陛下。でも感動です。この舞いなら、洗濯物もさぞやあったかフワフワに仕上がることでしょう。しかも、花粉なども吹き飛ばしてくれる。こんな魔法があったなんて」

 少し上ずった声の勇者を見上げると、目がしらには少しキラリと光るものが。その上、あんぐり開けた口元にもキラリ…。感動する気持ちは同じ。…ただヨダレは出ないけど。


「この舞いが我が王国の秘伝です。ただ、洗濯物があまり多すぎるとこの舞いがうまくできないこともあるのです。なので、扉のガラスのところ、下から約1/3のところに目安ラインが引いてあるのがわかりますか」

 勇者は、失礼ながらと断りながら、王妃のお腹あたりのガラス扉を見ている。

「なるほど。このラインまでに収めると、一番美しい舞いが見られるということですね」

「ほほほ、さすがに勇者、見事な洞察力です」

「いやぁ、こりゃ舞いった」

「ミ~~(結局それか~)」

 このなんとなく恥ずいやりとり。聞かれなきゃいいと思っていたら…。


「もう、おばあちゃんまで、なに舞ってんの~」

 マコさんの声で振り返ると、マシロさんまで手をゆらゆら動かし奇妙な足さばきで舞っている。う~ん、これはもっと恥ずい…?

「あら、ごめんなさい。踊りを習っているので、ついつい体が反応しちゃって…」

「もう、おばあちゃん」

「じゃあまた~」

 マシロさんは、右の方へ踊り去って行き、マコさんは恥ずかしそうにその後を追っていった。

 なんだこりゃ。

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