魔法の王国コインランド 第一周 その1 はじまりは突然に(2)
- 麻呂明弘
- 2021年3月11日
- 読了時間: 2分

近くにきた男は、布を拾って少しはらい、桶の中に戻すと、軽くワタシの頭をなでた。
「ミー?(これは一体?)」
え~?ミ~って言った?ワタシが?
「どういたしまして。でもこのままじゃいつまでたっても洗濯終わらないね」
「ミー、ミー?(てゆーか、通じてない?)」
「やっぱりそうか。もう仕方ないよな。なんとかするしかない。この魔王アクテンコー…」
男は、何かを決意したようにつぶやくと、どこまでもどんよりが続く空を見上げていた。
アクテンコー…。そう言えば聞き覚えがある。確か洗濯機の中に吸い込まれた時、落ちていく感覚の間、誰かの声が聞こえていた。
…スクッテ…マオウアクテンコー…スクッテ…
「怖いけど、やっぱり行くしかない。あの謎の王国に」
男はそう言うと、フ抜けたように見つめるワタシに向き直った。
「君も行くぞ、タスカル君。勇者テンチョーの頼れる相棒。てゆーか、お願い。一人だと…」
「ミ~(もじもじするんやない~)」
状況はさっぱり飲みこめないが、この姿のせいか、どうとでもなれという気分になってきた。
「それで、それで。そこで仲間を見つけてぇ、魔王アクテンコーを倒してもらう。どう?」
「ミー、ミー!?(ひとまかせか、てゆーか…勇者!?)」
「じゃぁ、ちょっとお着替えしてくるから」
いろいろ謎だらけの状況で放置されながら、習性なのかなんなのか、思わず洗濯をしながら待っている。なんなのワタシ。
しばらくすると、勇者テンチョーと名乗った男は、孫にも衣装という感じで戻ってきた。それはまさに中世そのもの。ただ身に着けていたその防具は、やけに純白に輝いていた。
「漂白したら、白くなっちゃった。テヘペロ」
なんだか、すごく、途方に暮れた。

























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