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魔法の王国コインランド 第一周 その8 謎の乾燥王子(1)



「あれ、左にも道がある。ちょっと狭いけど」

「ミ~~(でもニオイはこっち)」

 二人が言っていた乾燥ということからすると、やっぱりまっすぐの方向から乾いた感じのニオイがしている。って、ほんと野生な感じね、ワタシ。

「待って、待って、タスカル君。お腹空いてきちゃって~」

 勇者は生まれたての子牛のような足取りで、懸命に追ってきている。この距離で、マジか。


「ミ~(あれかも)」

「な、なんとも奇妙な…」

 相変わらずアライグマの目はボ~ッとしているが、見えてきたのは、銀色に輝き、上は紺色、下は緑色に色わけされた姿。背の高さだけならリズとジェーンよりも上。それが3台?3人?並んでいる。

 ただ近づいてみると、例の丸いお腹部分が上下にそれぞれある。しかも、一番近いうちの上側だけ、中に洗濯物が入っていてクルクルと回っている。これは…?


「う~ん、すきっ腹にこれは目が回る」

「どなたですか。私たち、おいしくありませんよ」

 勇者が情けなく目を回していると、突然上からかわいい声が。

 それを合図に上下左右あっちこっちから、急に賑やかな声が重なり合って…。

「え~僕たち食べられちゃうの」

「アライグマさん、僕たち堅いから気をつけてね」

「逆にアライグマさん食べちゃったりして」

「火祭りにあげちゃう」

「それを言うなら血祭…じゃないよ。かわいそうじゃんじゃん」

「ミ~~~(待った待った待った~)」

 勇者は無言。見上げると、ほぼ失神状態。ニオイを嗅ぐ限りでは失禁は大丈夫みたい。よかった。

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