魔法の王国コインランド 第一周 その8 謎の乾燥王子(1)
- 麻呂明弘
- 2021年4月1日
- 読了時間: 2分

「あれ、左にも道がある。ちょっと狭いけど」
「ミ~~(でもニオイはこっち)」
二人が言っていた乾燥ということからすると、やっぱりまっすぐの方向から乾いた感じのニオイがしている。って、ほんと野生な感じね、ワタシ。
「待って、待って、タスカル君。お腹空いてきちゃって~」
勇者は生まれたての子牛のような足取りで、懸命に追ってきている。この距離で、マジか。
「ミ~(あれかも)」
「な、なんとも奇妙な…」
相変わらずアライグマの目はボ~ッとしているが、見えてきたのは、銀色に輝き、上は紺色、下は緑色に色わけされた姿。背の高さだけならリズとジェーンよりも上。それが3台?3人?並んでいる。
ただ近づいてみると、例の丸いお腹部分が上下にそれぞれある。しかも、一番近いうちの上側だけ、中に洗濯物が入っていてクルクルと回っている。これは…?
「う~ん、すきっ腹にこれは目が回る」
「どなたですか。私たち、おいしくありませんよ」
勇者が情けなく目を回していると、突然上からかわいい声が。
それを合図に上下左右あっちこっちから、急に賑やかな声が重なり合って…。
「え~僕たち食べられちゃうの」
「アライグマさん、僕たち堅いから気をつけてね」
「逆にアライグマさん食べちゃったりして」
「火祭りにあげちゃう」
「それを言うなら血祭…じゃないよ。かわいそうじゃんじゃん」
「ミ~~~(待った待った待った~)」
勇者は無言。見上げると、ほぼ失神状態。ニオイを嗅ぐ限りでは失禁は大丈夫みたい。よかった。
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